2016年12月18日日曜日

最近のM&Aに関する雑感 化学メーカーのヘルスケア戦略 富士フイルムの和光純薬工業買収

富士フイルム武田薬品工業傘下の和光純薬工業を2500億円(100%ベース)で買収した。

元々同社の株を10%近く保有していた、ということだが、富士フイルムさんはいったい、ヘルスケアで何がやりたいのかわからない。

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元々フィルム屋なので、レントゲンフィルムのシェアが高く、X線画像診断の分野での地位は高かった。この辺の技術が拡大していったのだろうと思う。今でもレントゲン機やそれを管理するシステムなど周辺事業も手掛けており、シェアも高く、評価も高い。

技術に関してはヘルスケアにかかわらず、高いし、社員も優秀な人が多い。

2000年代には、医療機器系の海外企業の中小型M&Aでノウハウを蓄積していった。

そして2008年 富山化学工業を子会社化したころから、医薬品事業への参入を果たし、その後バイオベンチャー(ジャパンティッシュエンジニアリング:JTEも富山化学の関係会社だった)を数社買収。

2012年には、協和発酵キリンと合弁でバイオシミラーの会社を設立。我がアッビイの「ヒュミラ」を手掛けているらしい。


医療機器(画像診断系:これは本家と言える)、低分子薬(富山化学)・バイオ薬(小さいベンチャーがメイン。かなり高い技術の薬もある)、試薬(今回の和光純薬)、再生医療(JTE)、バイオシミラー(協和発酵キリン)と「あっちこっち」の感が否めない。

上記が富士フイルム全体の売上高だ。ヘルスケアは同社の注力事業だが、まだ4400億円に過ぎない。

そのヘルスケア事業の全貌は
予防・診断・治療とすべての領域にわたり「トータル・ヘルスケア・カンパニー」を目指すそうです。

今はとりあえず種を撒いて、芽が出たところから経営資源を注力していくってことなのか? また東芝メディカルシステムズの買収が失敗に終わったので、今回は必勝を期したのか? 東芝メディカルと和光でも事業領域が全く違う。

JTE(売上高14億円)は再生医療といっても、自家移植で作る皮膚のシートのようなものが主力製品で、ブロックバスター(売上1000億円級の医薬品)になる可能性はほとんどない。
ひどい火傷を負ったときに、自分の別の皮膚のIPS細胞から作ったシートを火傷部分に入れて、火傷した皮膚の再生・改善を図る、とかそんな感じ。

バイオシミラーは10年先はわからないけど、今の日本の医療行政の枠組みで、簡単にバイオシミラーが普及するとは思えない。

売却先の武田薬品工業は新薬の開発・買収に余念がなく、今回「ノンコア」の和光純薬を売却するんですからね!!!武田だって、バイオ・再生を血眼になってやっていますね)。

医薬品の日本ナンバーワンである「本家」武田がこれ以上抱えられない事業で、バイオ・iPS再生医療でシナジーを狙う富士フイルム? なんか変に聞こえました。

もちろん、武田が目指す再生医療と富士が目指す再生医療の方向性やレベル感が違うのかもしれません(武田は再生医療で治療薬を開発するというより、がん細胞を「再生」するなどして、より効率的な臨床検査を進めたいと聞いたことがある。マウスや試験管でがん細胞があーだ・こーだと議論するより、ヒトのiPS細胞で作ったがんが改善した、というほうがより次のステップの治験への確度が計算しやすいとかそういうことだと解釈)。

個人的に富士フイルムがヘルスケアに攻勢をかけること自体は悪くないとは思っているけど、中途半端感が否めない。もし、本気だったら、ゼロックスを売却して、塩野義製薬とかいっそのことエーザイ辺りを買収して、事業ポートフォリオをひっくり返すぐらいの気概が欲しいなあ、と物足りなさを感じているだけである。

もっとも、そんな大胆にM&Aができないのが今の日本なのでしょうね。敵対的なものは相変わらず否定されますし。

ちなみに医療機器と医薬品を一つの企業でうまくやりくりしている大企業って、ジョンソンエンドジョンソン(米)とロッシュ(スイス)ぐらいですが、彼らとてその道では世界1位、2位の事業の集合体です。そんなに簡単ではありません。

証券会社やマスコミは富士フイルムを敵に回すようなことはたぶん言わないでしょう。上顧客ですから。

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