2015年4月28日火曜日

バイオシミラーに関する雑感、その2 高額療養費制度(日本国内の話です)


前回記事(ご参考)


ちょっと機会があって、日本ジェネリック医薬品学会代表理事の武藤正樹氏という、国際医療福祉大学の教授のお話を聞く機会があった。

同大学は傘下に病院があり、武藤教授はそこで外来診察も行う医者でもある。また、いわゆる政府の審議会等の委員も兼務されており、端的に言えば、日本のジェネリック医薬品推進側の司令塔のような方と推測されます。

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「ジェネリック医薬品の新たなロードマップ」と題目されたセミナーを聴講したのですが、その中でバイオシミラーに関する見方がありました。

いわく、

現状の日本の制度では、政府側がいくら推進しても、政府の作った高額療養費制度がアダとなって、医者や患者にインセンティブが働かない。よって、このままでは全く浸透しないだろう、という結論でした。

たとえば、年収500万円の人は、(たぶん)月約8万円以上の医療費(3割負担部分)を超えると、この制度に引っかかります。

現在、バイオ薬と言われる最新薬を投与すると、1回あたり10万円以上する薬が多い。
たとえば、スイスのロッシュの子会社である中外製薬が日本で発売している、「リツキサン」というバイオ薬があります(グローバルでもベストセラーバイオ薬の一つです)。これを1回投与すると約30万円するそうです(サラリーマンだと3割負担なので、約10万円)。

年収500万円程度のサラリーマンの人は、30万円の投薬をされても、高額療養費制度を使えば、医療費は毎月最大約8万円で済みます(サラリーマンは年収によって、負担額は異なる。一方、年金受給者だと、もっと自己負担は少なくなる。入院とか外来とか同一病院内とか細かくルールがあるが、ちょっと無視してわかりやすく言った場合)。

この投薬を、治療では3週間間隔で6回から8回程度行うようです。すると2回投薬する月が出てきます。高額療養費制度を受けると、月約20万円の負担が約8万円で済みます。

これのバイオシミラーが仮に出たとします(「リツキサン」は海外では特許切れのはずなので、そのうち出るでしょう)。一応日本では、ジェネリックは先発薬の6割の価格だそうです。
すると、
30万円×6割=18万円。18万円×3割=約54,000円となります。
2回治療する月は、バイオシミラーでも先発薬でも、自己負担部分は同じ金額になってしまいます(8万円)。
サラリーマンなら、治療カレンダーとにらめっこしながら、どちらがお得か?という計算ができるかもしれませんが、年金受給者や後期高齢者となると、自己負担部分は4万円とか2万円とかになってきますので、わざわざバイオシミラーを使う理由がありません。
どっちを使っても、自己負担部分は2万円とか4万円とかになります。

先発薬でもバイオシミラーでも負担額は同じ、となれば、治療実績豊富な先発薬、というのが人情ではないでしょうか?

医者(あるいは薬剤師)も患者さんに、どのような薬を投与するかの説明義務がありますし、ジェネリックを投与するときはその旨を説明します。「ジェネリックの方がお得ですよ」と言えれば、いいですが、そうではないので、説明しづらい、と武藤教授は言っていました(また、抗がん剤になると、「5年生存率はどうなんだ」とかの説明を患者にできないからいやだという意見も医者にあるようです)。

したがって、今のままでは、バイオシミラーは浸透しないだろう、と言っていました。

現在、「レミケード」という田辺三菱が国内で展開しているリウマチ薬(海外ではジョンソンエンドジョンソンが販売する同社の主力薬の一つ)があります。日本化薬がそのバイオシミラーを発売していますが、現時点では、売上高は会社やアナリストの予想を下回っているようです。

武藤教授は、これを浸透させるにはどうすればいいのか、を考えていく、と言っていました。
(たとえば、がん診療拠点病院といって、各都道府県のがん治療の中核病院、では、バイオシミラーの使用率がXX%以上でなければ、その看板を外す、とか)

日本の医療費の増大が、財政赤字の本丸であり、医療費削減の大きな部分に医薬品費の削減が言われており、その中心にジェネリック薬がありますが、削減効果が大きいのは、バイオ薬なのです。

バイオシミラーの今後の動向を引き続き見ていきたいと思います。


これは武藤教授の講演会資料のPPからのものです。
典型的な総合病院の医薬費のトップ10だとおっしゃっていました(したがって他の病院でも同じような感じ)。上記金額は病院の仕入れ値でしょうか?たぶん薬価(医者・薬剤師⇒患者の価格)ではないと思います。

医療費負担の大きな部分がバイオ薬です(上記赤字部分)。「レミケード」、「アバスチン」「リツキサン」など世界的に有名なバイオ薬ですが、特許切れ済み、あるいはすぐに特許切れの商品が上位を占めますね。


一方、バイオ薬の活躍と共に、高額療養費の支出が急増しています。バイオ薬は日本でも90年代の後半ごろから承認され始めていますので、上のグラフと整合性がありそうです。

現在、C型肝炎治療薬の新薬を投与すれば、8週間で1200万円かかる、とか、小野薬品のがん免疫療法治療薬を1年間投与すると1500万円かかる、などものすごい薬価が株式市場でも話題となっていますが、高額療養費制度を使うと、自己負担部分はぐっと・ぐっと・ぐっと少なくなります(ギリアドサイエンシスのハーボニが日本で承認されても、上限8万円になるのかな???

手厚すぎて、薬のありがたみが分からなくなってしまいそうですね。

さて、自分だったら、、、 このようなバイオ薬を投与されるのは、かなり大きな病気のケースと想定されます。

その治療のため、といったら、やっぱり実績十分な先発薬をお願いしたい、と最初に考えるでしょうね(なんてったって、「シミラー」であり、同じじゃないし、治療実績が浅いので、臨床副作用とか気になりますよね)。 

次に、自分の財布と相談せざるを得ないですね。
その結果、自己負担部分が同じ、と分かれば、やっぱり、先発薬でお願いしたくなってしまいますね

難しい問題ですね。しかし、これが日本の財政にかなり影響を与えるのでしょうね。
単に赤字がけしからん、と文句言っても、イザ自分の立場になると、何も言えなくなってしまいそうですね。
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